Risk Oversight vol.6 (日) 「成功するためのCROの位置付け」

最高リスク管理責任者(chief risk officer、以下「CRO」 という)、または同等の上級リスク統括役員を任命してい る場合、株主は言うまでもなく、取締役会、そして経営陣 は、この役員の成功に関心をもっています。「いわゆる CROと呼ばれる幹部役員が、会社組織内において成功 できる地位と権限を保有しているか」という根本的な問 題について、今こそ検討すべき時です。

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主要な考慮点

“ 最高(Chief)”を意味する“C” が付く他の幹部役員と 同様に、CROの業務は困難なものです。有効な業務執 行のために、CROは最高(Chief)レベルの役員間のやり とりにおいて、卓越した、かつ有意義な発言をする必要 があります。株主の利益を守るためにブレーキ役を果た さなければならない局面において、CROは自分の昇進、 給料、ボーナスといった自分のキャリアに関するすべての 決定権を握っている最高経営責任者(以下、「CEO」と いう)に対峙できるでしょうか。また、CEO がリスク管理の 価値を理解できていない場合、─たとえば、規模の拡大 だけに焦点をおいたビジネスモデルを続け、金融恐慌を 引き起こしてしまったいくつかの金融機関のリーダーのよ うに―その場合はどうしようもありません。CROに必要 な地位と権限を与えていないと、リスク管理は失敗に終わ る可能性があります。

CROが効果的に職務を遂行する上で阻害要因となりう る事項を、以下に挙げています。これらの要因のうち1つまたは複数が該当する場合、CRO が戦略的に重要な 業務を遂行できない、またはそのための権限や影響力が ないという危険な兆候かもしれません。

CROの業務遂行上の阻害要因

  • 全ての点において、事業部門の責任者と同等と見な されない
  • CRO から取締役会への直接の報告ラインが存在し ない
  • 取締役会、上級経営者ならびに事業部門がリスク管 理は組織的対応ではなく、一人またはひとつの機能 にまかされていると考えている
  • コンプライアンス管理のささいなことに巻き込まれる
  • 絶えず組織体の中の機能分担について争っている
  • リスク管理が、事業機会の追求と同等の価値を持つ ものとして評価されていない
  • リスク管理が事業部門の業績に基づいて補正され ている
  • リスク管理がコンプライアンス機能の一つとして見ら れている、またはより悪いことに、事業遂行上の障害 物として見られている
  • CROの役割が不明確であり、他の上級事業管理者や 上級職能管理者との職務上の接点が欠落している

しばしば、CROは、企業の各部門や部署で適用されるリ スク管理プロセスの究極の推進者とされています。通常、 CROは特定のリスクを管理する責任は負いませんが、経営会議(またはリスク管理委員会)、CEO、取締役会(また は取締役会委員会)で与えられた権限に基づいて、各部 門に対して指導や助言を行い、協働する役割を担います。

組織内におけるCROの位置付けについて、決まった単 一のモデルは存在しません。われわれは、少なくとも下記 の4    つの基本的なモデルがあることを認識しています。

  1. 委員会アプローチ ─ CROが経営リスク委員会の 議長になるか同委員会への報告を担い、同時に最 高経営者へ報告する
  2. 経営陣と取締役会の両方へ並列に報告する
  3. CEOまたは最高財務責任者(CFO)等の他の幹部 役員へ直接報告し、取締役会へも報告する体制
  4. 取締役会にのみ直接報告する体制

CROがCEOまたはそれより下位の役員に対して報告す る従来のモデルにおいては、会社にもたらすリスクと利益 創出という二つの視点が相当に相反する場合、ジレンマ を引き起こす可能性があります。このような事業管理者 とリスク管理者間に存在する潜在的な利害対立を考える と、取締役会に対しての正式な報告が、企業にとってより よい選択なのではないかとの問いが提起されることもあり ます。上記(2)、(3)、(4)の選択肢のように、取締役会へ の報告の方法として、取締役全員で構成される取締役 会への報告、(取締役会の下部組織である)監査委員 会への報告、リスク管理委員会への報告といった、いくつ かのバリエーションがあります。ただし、これらのどの方法 を選択することになっても、取締役会に対する報告をより 正式なものとする場合には、取締役が CROと協議を行うオプションを設定することになります。取締役会が CRO からありのままの報告を求めたいのであれば、全員で構 成される取締役会へ、または取締役から権限委譲され た常設の委員会への直接のレポートラインを構築するこ とが、ベストプラクティスであると考えられます。

以下はCRO(または同等の役員)を設置している企業に 内在するリスクの性質に照らし、取締役会が考慮しなけ ればならない検討事項です。

  • 給与、権限、CEOとの接点において、CROは事業部 門の責任者と同等の扱いがされているか。
  • 前頁に記載されているような、CROが業務遂行する 際に阻害要因となりうる事項が、組織内に存在してい ないか。取締役会は、CROが経営陣とのやりとりにお いて「有効な声」になっていると満足しているか。
  • 取締役会は、有意義なリスク報告を得るためにCRO を活用しているか。CROは取締役会への直接のレ ポートラインを持っているか。

プロティビティは、全社的または事業別の企業戦略や事業 計画に内在するリスクの評価やリスク管理能力の評価な どの分野において、取締役会及び経営者を支援します。 評判やブランドイメージを損なう、ひいては企業戦略の遂 行の障害になりうるリスクの特定や優先順位付けを支援し ます。また、プロティビティでは、CROが複雑な市場リスク、 信用リスク、モデルの有効性リスク、商品価格リスク等を管 理していくために必要な能力の向上を支援します。

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