Risk Oversight vol.5 (日) 「リスク監視のための体制構築」

取締役会がリスク監視をどのようなプロセスと見なすかに よって、そのようなリスク監視のプロセスを遂行するための 体制をいかにして構築するかは変わります。今後、企業 価値を創造するためのビジネスモデルの遂行時に、企業 は絶えずリスクに直面します。リスク監視プロセスは、その ようなリスクに対して、取締役会と経営陣の相互理解を向 上させることができます。リスク監視のための体制構築に おいて、取締役会はどのような点を考慮すべきでしょうか。

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主要な考慮点

特に画一的な手法がある訳ではなく、取締役会は、会社 の規模、構造、複雑性、文化、リスクプロファイル等を考慮 して、合理的な方法で、柔軟に体制を構築することができ ます。このことを念頭において、以下に取締役会が考慮 すべき点を示します。

  1. 取締役会のすべてのメンバーは、戦略に対する責 任に照らして、リスク監視の責任を負うべきです。 取締役会が企業戦略の全体像を把握しようとするな ら、同時にその戦略に伴うリスクも把握する必要があ ります。また、取締役会にその戦略の遂行を監視す る責任があるのであれば、重要リスクを理解し、それ らが有効に管理されているかどうかを把握する必要 があります。そして、このような監視は、取締役会全 体、または権限委譲された常設の委員会によって実 施することができます。その場合でも、リスク監視の 統括責任は取締役会メンバー全員にあります。
  2. 代替手段として、リスク監視を常設の委員会に権限委譲することができます。 独立したリスク委員会の設置、監査委員会の役割の 拡張、取締役会の中の各種委員会(監査、金融、戦 略等)での実施など、様々な委任の方法を取ること ができます。これまで我々がご支援してきた経験に おいて、金融サービス業を除き、リスク監視業務を監 査委員会に委任しているケースが多く見られました。 米国では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が、数年 前に、監査委員会規程の中に監査委員会の責務とし て、リスク評価やリスク管理に関する会社の方針につ いて監査委員会が経営陣と協議することを、上場基 準に加えたため、このような傾向が高まっています。
  3. 監査委員会だけを選択肢とすることには留意が必 要です。 我々の経験上、リスク管理に取り組んでいる監査委 員会は、あらゆるリスクを対象としています。監査委 員会をリスク監視に活用する場合には、「他のすべ ての責務を遂行しながらリスク監視を行うための、十 分な時間、スキル、補助的なリソースを監査委員会 が持っているかどうか。」ということが、懸念事項とし て挙げられます。取締役会がしっかりしたリスク監 視を行い、かつ監査委員会がこの監視への対応を 行うことを意思決定した場合、監査委員会が財務報 告に係る多くの責務を負っていること、また、財務報 告リスクにおける事実上の最後の砦であることを認 識すべきです。特に、企業が財務報告について複 雑な課題を抱えている場合、この点は軽視すべきではありません。サーベンス・オクスリー法(SOX 法)の 制定により監査委員会へ配置されることになった、い わゆる「監査委員会財務専門家」が保有すべきスキ ルとして、必ずしも企業が直面するビジネスリスクや オペレーショナルリスクの評価および管理に対する企 業方針の評価は含まれていません。残念ながら、企 業や監査委員会に承認された、オフバランス取引に 関する報告書や他の財務報告書によって、リスクの 管理・リスクの監視を効果的に行うための透明性を 損ねることがあります。それゆえ、監査委員会に任 せることよりも、異なるアプローチを取る方が得策かも しれません。​
  4. 取締役会がいかなる選択をしようとも、最終的には 携わる取締役のバランスが重要な鍵となります。 業界および業界特有のリスクに関わる知識は、重要な 財務リスクや事業リスクを有する企業にとって重要で す。もしこれらの知識が欠如していた場合、取締役 会がいかなる選択をしようとも意味をなさないでしょう。
  5. 情報入手もまた重要となります。 取締役が、内部および外部より、有効なリスク監視に 資する情報や洞察にアクセスすることは不可欠で す。有効でないリスクの報告がなされる場合、リスク 監視の議論が非現実的なものとなります。​
  6. ニューヨーク証券取引所 (NYSE) へ上場している企 業は、さらに留意が必要です。 例え、取締役会が監査委員会ではなく、独立したリス ク委員会を設置するか、または委任した別の常設の 委員会にてリスク監視に携わることを決定した場合 においても、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上 場している企業であれば、監査委員会の責務として、リスク評価やリスク管理に関する方針の経営陣との 協議について、監査委員会規程に織り込む必要が あります。​
  7. 複数の常設の委員会にリスク監視を実施させる場 合、全体像の見落しに注意が必要です。 複数の委員会に監視させる場合、監視事項を分割 することになるため、結果として、重要なリスクの考慮 が抜け落ちる可能性があります。この方法を選択し た場合は、取締役会全体として注意深く統合してい く必要があります。

事業執行に内在するリスクの性質に照らして、取締役会 が検討すべき事項を以下に示します。

  • 取締役会は、リスク監視のための体制構築を検討し ているか。
  • 取締役会は、企業に内在する最重要リスクを効果的 に監視するための、専門知識や業界知識を保有し ていると満足しているか。
  • 取締役会とリスク監視に責任を持つ委員会のどちら か一方、あるいは両方が、リスク監視のために必要な、 包括的かつ客観的

プロティビティは、取締役会がリスク監視体制を評価しよ うとする場合、取締役会や経営者による全社的リスクの 評価やリスク管理に関わる企業戦略策定を支援していま す。プロティビティでは、いかなる監視プロセスにおいて も通用する、よりよいリスク監視プロセスを満足させるため の報告プロセスの改善を支援いたします。

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