Risk Oversight vol.40 リスクとオペレーション管理の統合

オペレーションリスクとは、顧客に対する価値を創造するこ とや期待される財務上の結果をあげるためのビジネスモ デルの有効性を、将来に発生する事象が妨げるリスクで す。オペレーションリスクは、サプライチェーン、顧客満足 プロセス、人事、IT、商流、主要顧客、最終消費者等、企 業のビジネスモデルの執行に関連するバリューチェーン 上のさまざまな活動に関係しています。

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主要な考慮事項

一般的に、オペレーション評価は実績を品質、時間、イノ ベーション、コスト等の目標と比較し、主要なギャップを識 別します。重要なパフォーマンスギャップが発見された 場合、その根本原因を解明し、ギャップを埋めるプロセス 改善を図るために、適切な是正措置がとられます。ここ で問題なのは、今日のビジネス環境において、すなわち多 くの企業において境界が失われている現状でも、このよう な従来のアプローチで足りるのかということです。

過去 20 年にわたり、グローバル化、アウトソース、人材の 国際化、IT 化、シェアードサービスセンターの普及により、 多くの企業では拠点やプロセスを統合して不要・無駄な 業務を削減し、残った業務に焦点を当てかつ自動化を 図ってきました。統合品質管理、プロセスリエンジニアリン グ、シックスシグマプロセス改善等の継続的活動は、プロ セスや製品のコスト削減・品質維持を念頭にサプライヤー とカスタマー関係の強化ならびにサプライチェーンと流通 チャネルの統合を進めてきました。

余剰在庫、複数サプライヤー、その他のバッファを削減し、 在庫の削減、国またはグローバルの戦略サプライヤーの 単一化、ジャストインタイム製造・物流技法を採用すること は、品質・時間・コストを事業継続よりも優先させることにな ります。しかし、天災等壊滅事象によるサプライチェーン の寸断は、このトレードオフに伴うリスクを示します。その ため、オペレーションリスクに対する適切なリスク評価アプ ローチは、企業の枠を超えて上流から下流末端までの バリューチェーンを分析し、主要サプライヤーに対するサ プライヤーを含む上流のサプライヤー関係から、下流の 販売チャネル、カスタマーリレーション、さらには最終ユー ザーにいたるまで検討する必要があります。

実際には、企業の外部との関係は内部のプロセス、人 材やシステムと同様にビジネスモデルを実現する上で重 要です。そのため、オペレーションリスクの評価はチェー ンの中の主要なリンクが失われるリスクに焦点をあてた、「大局的な」アプローチを取る必要があります。

バリューチェーンの主要な構成要素がプロセスの欠陥や 想定外の天災等壊滅事象によって失われたり、損なわれ たら企業のビジネスモデルにどのような影響を及ぼすで しょうか。例えば、合理的な価格の主要原材料のサプラ イヤー、合理的コストのエネルギー利用、クレジットラインな らびに運転資本、ビジネスに不可欠な従業員、主要なIT システム、主要販売チャネル、運送物流、主要な顧客契 約といったバリューチェーンの要素が失われた場合のビ ジネスインパクトを検討してみてください。言い換えれば、 価値創造の全ての段階において、原料インプットから製 品アウトプットまでのバリューチェーンの主要構成要素の 不足、喪失、品質不良または顧客の喪失がどのような影 響を及ぼすでしょうか。また、その場合、企業は事業をど れほどの期間継続できるでしょうか。

オペレーションリスクを評価する際は、経営者は以下の要 素を検討しなければなりません。

  • 影響の速度:バリューチェーンの主要な構成要素の 喪失が急に発生した場合を含む(それはくすぶってい たものか、突然発生したものか)
  • 影響の期間:その構成要素を交換できるまでの期間
  • 企業の耐久性:構成要素の喪失をもたらした事象に 対応できる耐久度
  • 企業のバリューチェーン上における取り返しのつかない リスクの規模:(補償コストの増大やリコール、環境衛 生安全にかかわる潜在的な問題等、ダウンサイドしか ないリスク)

オペレーションの評価は、実績と目標のギャップの比較だ けにとどまってはなりません。企業は遅かれ早かれ危機 にさらされるのですから、上記の点を定期的に評価する 必要があります。

以下は企業のオペレーションに内在するリスクの性質に 応じ、取締役会が考慮すべき事項です。経営者のリス ク評価プロセスは、下記が生じた場合の事業活動やビジ ネスモデルへの影響を検討しているか

  • 主要サプライヤーが想定外の天災等壊滅事象によっ て失われる場合、事業インフラが喪失または主要な物 流が損なわれる場合
  • 主要な構成要素が品質基準をみたさなかった場合
  • 主要顧客が倒産または吸収合併される場合、あるい は主要顧客との契約が更新されない場合
  • その他主要原材料、熟練労働者、合理的な価格の電 力の利用等バリューチェーンの構成要素が何らかの 理由で失われた場合

取締役会がリスク監視を実施するにあたり、プロティビ ティは取締役会及び経営者が企業のリスクを識別・評 価し、管理する方法を策定・実施することを支援します。 プロティビティではリスク評価を、オペレーション管理を 含むコアビジネスプロセスに統合する支援を実施して います。

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