Risk Oversight vol.4 (日) 「リスク選好に関する検討」

過去 2 年間、リスクのプロファイルが劇的に変化してきて います。

このような世界の激しい動きは、企業のリスク選好(Risk Appetite)にどのような影響を与えているのでしょうか?そ もそもリスク選好をどう理解すべきなのでしょうか?また、経 営陣、取締役会はどのようにリスク選好を検討すべきなの でしょうか?

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主要な考慮事項

リスク選好とは、企業がビジネス機会を見い出す原動力と その要因に対して、経営陣と取締役会が共通の理解を持 つことといえます。リスク選好により、組織体がどの程度の 業績変動幅を受け入れることができるかを概観することが できるようになるのです。

リスクの監視は、リスク選好を理解することからはじまりま す。成功するためには、企業は、価値を創造するためにリ スクを取らねばなりません。問題は、果たしてどの程度のリ スクを企業が負うべきかなのです。価値創造のためのバ ランスのとれたアプローチとは、企業がリスクを慎重に受け 入れ、また、合理的かつ成功裏に管理できることを意味しま す。リスク選好は、常に明確ではないものの、時間とともに 企業行動を通して明らかになっていきます。認識している か否かに係らず、どの企業にもリスク選好があります。従っ て経営陣および取締役会は、リスクを取る企業行動を直視 し、必要にして十分な理解をすることが重要です。

組織体のリスク選好について継続的に検討することは、リスクを回避し、ヘッジする方策と同様に、価値創造のため の最善の方策ともなります。それにより組織体は、リスクに 対し回避、許容、軽減、移転、活用といった広範囲に亘る リスク対応へと、選択の幅を拡げることが可能となります。 例えば、企業は、継続的に価値向上を果たすべく、特定 の顧客セグメントや地域別市場を開拓したり、若しくは、全 く異なるビジネスに参入するなどの、リスクを取るかもしれ ません。リスク選好を組織内で話し合うことにより、企業は 特定のリスクが許容範囲を超えることを察知し、リスクを全 て回避するか、保険やジョイント・ベンチャーを通し他社にリ スク移転を図るなどを決定するかも知れません。

「リスク選好」は、戦略レベルでは、主にビジネス・モデルそ のものに深く関係があります。「リスク許容度」は、戦術レ ベルで、主に組織体の具体的な目的に関連します。組織 のリスク選好は、リスクを負える組織的能力のレベル、なら びにリスクを引き受けて適切に管理することが可能なリス クレベルを反映することになります。それは、リスクを取るも のと避けるもの両方を含む組織戦略、およびその実行に 固有の経営陣の「世界観」を表しているともいえるのです。 ビジネスが複雑化し、財務リスクが大きく変動する中では、 往々にして、戦略設定のための “ガイド"を提供する定量 的で明確な方針が必要となります。それらが明確にされ れば、リスク選好は、リスクマネジメントのための全体的な 方向性を明らかにし、目標設定プロセスにおける基盤とな るのです。例えば、企業は引き受け可能な損失限度額 の設定や、一定以上の損失発生につながるような行動を禁止するかもしれません。リスク選好とは、企業がもっとも 得意とすること、つまりコアコンピテンシーと、企業が負える リスクとを整合させるツールとも言えるのです。

取締役会のための質問

以下は事業運営に内在する企業リスクの特徴に照らし、取締役会が検討を考慮すべき質問例です。

  • 経営者のリスクに対する選好、組織体のリスクプロファ イルとリスク選好との整合性などについて、取締役レベ ルで定期的に実質的な検討をしているか ? 取締役 会は、重要事項に関する執行経営陣の対応について 承認する際に、リスク選好を考慮しているか ?
  • 取締役会と執行経営陣は下記のような事項について、 定期的に話し合いをしているか。
  • 特定の事業分野における業績変動の許容レベル
  • 業務活動の範囲・限度を定めるための禁止活動につ いての方針
    • 目的達成指標
    • 定期的かつタイムリーな、重大な問題に対するうまく 行った際およびうまく行かなかった際の議論
    • 企業戦略に内在するリスクと前提
    • ビジネス計画における“ハードスポット"(確実な点)および“ソフトスポット"(不確実な点)
    • 企業のリスク許容度や、そのパラメーターに対する例 外やニアミス、それらに対する是正計画
    • 戦略に内在する主要な前提に対する、事業環境の 変化の影響。望ましいリスク選好を含む。

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