Risk Oversight vol.39 2013年のリスク監視課題の策定

新年が始まり、2013年の取締役会のリスク監視課題の焦 点が定まっているかが問題となります。マーケットならび に事業環境の変化は新たなリスクを生み、リスクプロファ イルにも変化が生じ、既存のリスク管理体制の有効性を 弱めます。リスク監視もまたこれらの変化を考慮する必 要があります。

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主要な考慮事項

以下は取締役会が 2013 年のリスク監視課題を策定する 上で考慮し検討すべき事項です。

  1. 自社のリスクプロファイルに変更はあったか : 経営者は企業の全社最重要リスクの評価を更新し ているか、たとえば、経営者は取締役会に対し、前 回のリスク評価から増加したリスク、減少したリスク、 以前のままのリスクについての要約について報告を しているか。更新したリスク評価は取締役会の考 えと合致しているか。
  2. リスク監視権限を委譲することで主要リスクの 監視を適切にカバーできているか : 全社的最重要リスクは適切な取締役会の委員会に 委譲され、委員会の通常活動内で監視ができるよ うになっているか。委員会の多くは、規定された活 動の範囲で一定のリスクを評価しているが、リスクに よっては監視の対象を明確にするために特に指定 した委員会に担当を委ねる必要があります。
  3. 取締役会はITに関連したリスクに十分配慮しているか : モバイル機器、ソーシャルネットワーク、クラウドコン ピューティング等、急激なイノベーションはアクセスで きるデータ量の増大とともに新たなリスクを顕在化さ せます。これらのイノベーションにより、企業は顧客 価値の創造やオペレーションの再検討を迫られてい ます。さらに、プライバシーや情報セキュリティ、知的 財産権や資産保護の要請が高まるとともに法規制 の複雑性も増し、情報漏洩時の経済的損失ならび にレピュテーションの損失から企業を守るための情 報セキュリティへの投資に拍車がかかっています。
  4. 取締役会は新規リスクを識別するプロセスがあ ることを確認しているか : 取締役はリスク評価を通じて新たな視点を得てい るか、言い換えれば、将来の「既知の不知」や潜在 的な「不知の不知」についても考えているか確認し なければなりません。また、潜在的リスクは1 年また は 3 年〜 5 年という戦略的計画期間では顕在化し ないかもしれませんが、企業の戦略、ビジネスモデル、 地理的ポジションと関連する長期的なグローバルリ スクを経営者は検討しているか。
  5. 取締役会は、企業の戦略の前提条件を理解して いるか : これらの前提条件は、自社の能力、競合他社の能 力、顧客ニーズ、経済トレンドの予測等、戦略的計 画期間における経営者の「世界観」を表しています。 変化する事業環境下で企業戦略を実行する際に、 これらの前提条件が無効化されていないか早期に 発見できるようなリスク指標を設けているか。
  6. 取締役会は受け取るリスク報告に満足しているか : リスク報告は最低限重要全社リスク及びその管理 の要約についての情報を提供するものです。それ 以上の必要な情報については取締役会自ら経営者 に求めなければなりません。さらに、取締役会は外 部ソースから重要なリスク情報を入手し、経営者か ら入手した情報を補完する必要があります。
  7. 取締役会は自社のリスク管理に十分なリソース が割り当てられているか確認しているか : 取締役は、適切なポリシー、プロセス、人材、レポーティ ング、ツール、インセンティブ及び企業文化が主要リス クを低減させているか確認しなければなりません。
  8. 取締役会は企業文化に問題がないか、また報酬・ インセンティブ制度に問題がないか定期的に評 価しているか : リスク管理の有効性を損ない、不適切なリスクテイク や企業のポリシー・プロセスに違反する行動がない か確認しなければなりません。透明性の欠如、利益 の相反、不均衡な報酬制度は企業内に盲点を作り 出し、効果的なコントロールに反する不適切な行動 を助長させる兆候となります。
  9. 自社は想定外の事象に対応できるか : 企業は想定しにくい事象に対応する計画を策定し ているか。これらは、予知できない事象であり、いわ ゆる想定外のリスクです。企業は「影響の重要性 大・発生可能性小」のリスクについて、シナリオ分析 を用いてレピュテーションへの影響、影響を及ぼす 速度・影響の持続期間、自社の対応準備度の観点 から評価・優先付けしているか。
  10. 取締役会は定期的にリスク監視プロセスを評価しているか : この評価は取締役会の全体的な有効性に関する 定期的評価と統合することが必要です。特に、取 締役会が効果的なリスク監視を実行するだけの専 門性を備えているかを問うことが重要です。事業 環境・テクノロジー環境ならびに業界は絶えず変化し ているので、この問いかけはますます重要になります。

以上の事項は、取締役会の 2013 年リスク監視課題を見 直す上でのフレームワークとなるでしょう。

取締役会の考慮事項

取締役会は、企業の事業に内在するリスクの性質に応じ、 以上の事項について考慮すべきです。

プロティビティの支援

プロティビティでは、企業のリスクを識別・評価し、リスクを 管理するための戦略を実行する支援をしています。プロ ティビティでは、企業が戦略策定を含めて主要ビジネスプ ロセスとリスク管理を統合するとともに、リスク監視プロセ スにおけるリスク報告プロセスを改善する支援を実施し ています。

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