Risk Oversight vol.36 コンペティティブ・インテリジェンス(CI)で早期に変化の兆候を把握する 真のコンペティティブ・インテリジェンスとは、公開されてい るがあまり注目されていない情報を収集・分析する適正 かつ本質的な機能であり、「点と点」を結び、競争優位の 源泉となる視点を明らかにすることにあります。コンペティ ティブ・インテリジェンスを戦略策定と効果的に整合させる ことで、企業は他社に先んじて機会や弱点を感知するこ とができます。 日本語版PDF 英語版PDF Topics 取締役事項 主要な考慮事項 コンペティティブ・インテリジェンスとは、より効果的な意思 決定を可能にするために、イノベーション、顧客、競合他 社、規制当局の動向、市場の動向に関する情報を識別・ 収集・分析・伝達することです。一つのプロセスとしては、 外部環境に関する情報を収集し、適切な形に変換し、こ の情報が企業の戦略に影響を与える重要な要素を分析 することです。競争優位に役立つコンペティティブ・インテ リジェンスは、企業の競争能力に影響を与える様々なビジ ネス環境に目を向けますが、その中でも特に重要な要素 を識別できるような手法の確立が必要です。 いうまでもなく、経営者は外部市場の事象や展開に十分 な注意を払わなければなりません。安定かつ予想可能 な市場はもはや過去の遺物となってしまいました。グロー バル化やテクノロジーイノベーションの加速により、市場は 敏速に変化し、経営者の戦略やビジネスモデルに大きな 影響を与えます。内部的なプロセスや業績管理も重要ではありますが、変化の早い不確実性の大きい現在にお いては、戦略とビジネスモデルの適合性こそが重要となり ます。そのためにも、早期に変化の兆候を把握すること が必要となるのです。 ダイナミックで複雑かつ不確実なビジネス環境において 早期に兆候を把握するためには、コンペティティブ・インテ リジェンスプロセスは以下の 2 つの課題に対応しなけれ ばなりません。 情報収集プロセスは、新規市場への進出や新事業の 開発など、新たな成長機会に資本を投下するための 情報を把握し、新たな市場機会を最大化できているか。 情報収集プロセスは、変化するビジネス環境下で、戦 略遂行における前提条件が無効になる重要な兆候を 理解し、戦略の事業環境不適合リスクを最小化できて いるか。 新たな市場開拓の機会を的確に捉えるには、経済動向、 競合他社、顧客、サプライヤー、規制当局その他外部要 素をモニタリングし、他社に先駆けて市場を開拓する機 会を示唆する変化を評価することが必要です。事業環 境の不適合化リスクについていえば、経営者はリスクが 知れわたる前に適切な意思決定をできるように、前提が 変化するリスクの兆候を把握することが必要です。つま るところ、コンペティティブ・インテリジェンスの目的は、新たな機会やリスクを先んじて管理し、競争優位を確保し、業 績を向上させることにあります。 価格決定等の戦術的な問題よりも、コンペティティブ・イン テリジェンスは大局的な視野に立ち、複数の情報源から 得られた情報を分析・統合し、差別化した新たな機会の 開拓や新規リスクを識別することを目的とすべきです。そ の結果、企業のコンペティティブ・インテリジェンスは、激し く変化する世界に対するCEOの「目と耳」となるでしょう。 例として、近年の金融危機をもたらしたサブプライムローン 戦略は、住宅市場が安定または上昇し続けるという前提 条件に基づいていましたが、その結果はみなが知るところ です。このことは、戦略の前提条件の有効性はビジネス 環境の変化に即して評価されなければならないということ を示しています。新たな市場機会をとらえることと、市場 の混乱は、表裏の関係にあり、先駆者になれる仕組みこ そ、環境が刻々と変化する中で生き残り、成長を持続する 上で必須です。市場の混乱リスクの計測は困難ですが、 リスク評価の取り組みは、コンペティティブ・インテリジェンス プロセスが常時モニタリングすべき重要な兆候を識別でき なければなりません。 他方、企業戦略の前提条件と結びつかないコンペティ ティブ・インテリジェンスは、局所的、場当たり的なものであ り、戦略的には無意味なプロセスに過ぎません。コンペ ティティブ・インテリジェンスが戦略の前提条件と無関係に実施されているのでは、得られた情報は大局を示さない おそれがあります。コンペティティブ・インテリジェンスでは、 企業の戦略の前提条件の反対思考を適用して得られる 重要な兆候をモニタリングし、市場の混乱リスクを許容レ ベルまで低減しなければなりません 。しかしながら多くの 企業ではコンペティティブ・インテリジェンスが企業価値の 保全に十分活用されていないのが現状です。このこと は重要な差別化といえます。 取締役会の考慮事項 以下は企業の事業に内在するリスクに応じ、取締役会が 考慮すべき事項です。 経営者と取締役会に、企業戦略に関する重要な前提 条件についての共通理解があるか。 自社のコンペティティブ・インテリジェンスは企業戦略 の重要な前提条件に影響を与える兆候を注視してい るか。 プロティビティの支援 プロティビティは取締役や経営者が主要リスクを識別・管 理する支援を実施しています。プロティビティでは、企業 の戦略策定、業績管理、リスク管理プロセスを統合し、企 業が先駆者の地位を確立することを支援しています。 全ての関連情報は こちらへ