Risk Oversight vol.28 「ソーシャルメディアがもたらすリスク」 企業ブログ,Youtubeのような動画投稿サイト,Facebook のようなソーシャルネットワークサービス,twitterのようなミ ニブログツールなど,インターネット・ウェブ 2.0 及びモバイ ルテクノロジーを利用して消費者を直接結びつけるのが ソーシャルメディアです。ソーシャルメディアの登場ととも に顧客マネジメントやマーケティング,企業のコミュニケー ションは,新しい次元に突入しました。 日本語版PDF 英語版PDF Topics 取締役事項 主要な考慮事項 直接的コミュニケーションやソーシャルメディアグループ等, 企業・消費者間を結びつける新モデルは,企業にとっても はや無視できないものとなっています。このような新メディ アを利用し,企業は消費者と直接交流したり,コンテンツに 新たな価値を与えたり,消費者等と外から見える形で対 話ができるようになりました。他方,ソーシャルメディアの潜 在価値の利用に失敗すると,製品・サービスのブランド化・ 市場へのアピールや改善等で,競合他社に遅れをとるお それがあります。 ソーシャルメディアサイトを通じ,企業は,顧客からその意 見,体験,知識に基づき,満足・不満足について直接の フィードバックを受けられるようになり,また,企業の側からも, 前もって意見や対応を打ち出すことが可能となります。さ らに,ソーシャルメディアにより,製品開発チームがそのロー ドマップを公開し,見込み顧客層から早期のフィードバッ クを得ることもできます。マーケティングにおいても試験 的なメッセージを流し,ほぼリアルタイムで反応を確かめることもできますし,顧客に対して自社製品の活用方法につ いて案内することも可能です。 このように,ソーシャルメディアには様々な利点がありますが, 反面,以下の10 項目のような新たなリスクをももたらします。 IP・機密データの漏洩 ソーシャルメディアを通じて企業の機密情報が漏洩した り,企業ネットワーク情報が流出し,ウィルスやマルウェアに 感染してしまうリスクがあります。 コンプライアンス違反 商標・著作権違反,情報セキュリティ違反,雇用契約違 反,ブライバシー違反,また電子コミュニケーションの管理 ミスが情報保護法や eディスカバリの影響を受けるリス クがあります。 評判低下 消費者の意見はソーシャルメディアを通じて短期間に 広まるため,企業は効果的な危機対応計画を準備して おく必要があります。さらに,従業員の問題行動,製品・ カスタマーサービス部門への非現実的な要求,私的利 益を目的とした不適切なつぶやき,消費者の求める公 開性や誠意にそぐわない行動等,企業自身の行動がレ ピュテーション損失につながるリスクもあります。 財務的損失 ソーシャルメディア上での意見表明が,株価に影響し たり,金融商品取引法・証券取引法の規定やインサイ ダー取引規制に違反するリスクがあります。 人事への影響 ソーシャルメディアは自社の人材雇用に役立てられる 反面,競合他社による引き抜きにも利用され得ます。 ・世代ギャップ 企業によっては,若い世代が ITをどのように利用して いるか理解できないため,時代に即したマーケティング キャンペーンを実施できないこともあります。 安全性リスク 企業の責任体制や旅程等従業員の活動計画が公開 された結果,役員や従業員個人の身に危険を及ぶリス クがあります。 ブランドのなりすまし 第三者のなりすましにより企業ブランドを不正利用され, 消費者等が被害にあうリスクがあります。 ソーシャルメディアフォーラムの管理ミス 十分な数の参加者を惹きつけられなかったり,勢いを維 持できなかったり,関心が集まってきた段階での適正な 規模拡大に失敗したり,投稿が横道に逸れたり投稿者 間の過激なやりとりをコントロールできなかったりするリス クがあります。 個人的レピュテーションの損失 従業員や従業員の友人によるプライベートなコメントが 第三者に閲覧されるリスクがあります。 これらは,ソーシャルメディアに関わるすべてのリスクを示 したものではなく,またソーシャルメディアの利用に反対す るためのものでもありません。最大のリスクは「ソーシャル メディアを全く使わないこと」かもしれません。その他のリ スクは,企業の経営状況やソーシャルメディアの利用状況に応じ,リスク評価・リスク管理において考慮する必要があ るでしょう。 取締役会の考慮事項 以下は,企業の事業のリスクの性質に応じて,取締役会が 考慮すべき事項です。 自社はソーシャルメディアを利用しているか。 利用しているならどのように利用しているのか。自社の ソーシャルメディアへのアプローチは競合他社と同じな のか異なるのか。 ソーシャルメディアを利用しているなら,経営者は上記リ スク,またリスクが現実化した場合の対応方法を含め, 考慮しているのか。 ソーシャルメディアの変化に対応するのに十分なリソー スが費やされているか。 ソーシャルメディアサイトで共有できるもの・できないもの を明確に区分し,利用する場合の条件,企業資産と個 人資産の区別,法令に即した情報保持を徹底し,企業 サイトへの問題投稿への対処法,従業員やその関係 者の行動による意図しないレピュテーション損失リスク を管理する明確なポリシーを定めているか。 プロティビティの支援 プロティビティは,企業の文化・市場ポジショニングに即し た,ソーシャルメディア利用アプローチの策定を支援し,ま た,現在のメディア社会において,ソーシャルメディアサイト の利用や情報セキュリティ・プライバシーその他リスクの 対応を支援しています。 全ての関連情報は こちらへ