Risk Oversight vol.26 「取締役会が考慮すべき10項目」

株主の積極的な行動に伴い、リスクの監視を含むガバナ ンス監視への要請が高まっています。昨今、ビジネス環 境の速度・複雑さは増す一方ですし、クラウドコンピュー ティング、携帯端末、ソーシャルメディア等、テクノロジーも 急速に進化しています。法規制の要請も拡大しています し、労働環境も日々変化しています。これらの変化に伴 い、新たなリスクが顕在化し、またリスクプロファイルも変化 し、ビジネスモデルも変更の必要に迫られます。ダイナミッ クな環境変化に対して、取締役会もまたリスク監視につ いて視点を新たにする必要があるでしょう。

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主要な考慮事項

以下は取締役会が 2012 年のリスク監視計画を立てる上 で考慮すべき10 項目です。

  1. 何が企業にとっての最重要リスクで、その影響の大きさ・発生可能性はどの程度か。戦略レベルで全社リスクを管理することが重要で あり、5 〜 10 項目以下のリスクに絞り込むべきです。 日々のリスクの管理は経営陣の責任範囲です。​
  2. 企業は重大リスクをどの程度の頻度で見直しているか。 リスク評価プロセスにおいてビジネス環境の変化を 考慮する必要があります。新規リスクを含む重大な 企業リスクを識別・優先付けすることは、常にリスクに 対して新鮮な見方をする上で重要です。
  3. 最重要リスクを担当するのは誰で、誰に報告がされているか。重要リスクを識別した後、その担当者あるいは担当 部署を決定する必要があります。リスク担当部署の ギャップや重複がないようにしなければなりません。
  4. 企業は最重要リスクを効果的に管理できているか。有効なリスクマネジメントには、個々の重要な全社的 リスクを管理・モニタリングする強固なプロセスが必 須です。ビジネス環境の変化に伴い、リスク管理能 力もまた継続的に改善されなければなりません。
  5. 気をつけなければならない組織上の「盲点」がないか。 企業文化上の問題や問題行動はリスク管理の有 効性を損ない、不適切なリスクテイクやポリシー・プロ セスの無視に結びつきかねません。例えば、透明性 の欠如、利益の相反、悪い知らせを無視する粗野 な文化、バランスを欠く報酬制度はリスク管理プロセ スを無為にするおそれがあります。​
  6. 企業は、自社の戦略の前提条件を理解し、前提条 件を変化させうる外的要因をモニタリングできる ように競合他社情報を収集しているか。 企業は自社のビジネスモデル・戦略に固執するあま り、手遅れになるまで状況の変化に気付かないおそ れがあります。それゆえに、ビジネス環境の変化に 伴い戦略の主要な前提条件に変更がないかをモニ タリングすることが賢明な対応です。​
  7. 企業は自社のリスク選好を明確化し、経営のためのリスク許容度を明示しているか。リスク選好に関する対話により、企業がどのようなリ スクをとるべきか、どのようなリスクを避けるべきか、ま た事業を遂行するために許容される範囲のパラ メーターについてバランスの取れた話し合いをする ことが可能となります。リスク選好の明確化は、自社 がビジネス目的を遂行する上でどこまでリスクを許容 するかを表すリスク許容度の明確化につながります。 例えば、売上の変動幅、利率の変動幅、従業員の 採用、育成、人数などそれぞれ異なる目的により、異 なるリスク許容度が設定されます。​
  8. 企業のリスク報告により、経営陣や取締役会は最重要リスク及びその管理について必要な情報を 得ているか。 リスク報告のあり方について取締役からの不満はよ く聞かれるところですが、取締役会のリスク監視の 有効性は、取締役会が社内及び必要に応じて社外 から本質的なリスク情報を入手する能力に左右され ます。重要な全社リスクや新規のリスクがモニタリン グされ、取締役会に報告されるようなプロセスが存 在していますか?また、これらのリスクがどのように管 理されているかを取締役会に有効かつ効率的に提 示するリスク報告について、改善点を検討する機会 がありますか?​
  9. 企業は想定外の事象にも対応できる態勢になっ ているか。 企業は、発生可能性は低い想定外の事象に対応 する計画を持っていますか?影響大・可能性小のリスクついて、レピュテーションへの影響、影響の速度 及び期間、企業の対応準備度を考慮して優先順位 づけをしていますか?​
  10. 取締役会は有効なリスク監視のために必要なスキルを有しているか。 重要なリスク課題について上級経営者に適時に指 示できるように、取締役会はビジネスの内容、業界及 び環境の変化がビジネスモデルに与える影響を理 解しなければなりません。
    以上の考慮事項は、取締役会が 2012 年のリスク監視の 課題を考える上で、新たな視点を提供します。これらの 課題に応えることで自社のリスク管理能力の成否の度合 いを測ることもできます。

取締役会の考慮事項

自社の事業の性質に応じ、取締役会が上記の考慮事項 を検討することをお勧めします。

プロティビティの支援

取締役会がリスク監視のための体制を考えるにあたり、プ ロティビティは取締役会の体制作りならびに上級経営者 が全社リスクを識別・評価し、リスクを管理する戦略・方策 の策定を支援します。プロティビティは、リスク評価のプロ セスと戦略を含む主要な事業プロセスを統合し、リスク監 視プロセスのためのリスク報告の改善を支援します。こ れは取締役会の態勢に関わらず、監視プロセスの成功 の鍵となります。

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