Risk Oversight vol.21 (日) 「贈賄リスクへの対応」

賄賂の防止は今や世界的な取り組みとなっています。WTO、EU、ASEAN等を初めとした多くの国際的な組織が、加入国に対して賄賂の廃絶を要請しています。米国においても、海外腐敗防止法(FCPA:Foreign CorruptPractices Act)を通じた賄賂の廃絶に向けた取り組みがなされています。2010 年には、英国も100 年ぶりに賄賂禁止法案を改正し、外国公務員のみならず、私企業間での「賄賂」をも禁じ、FCPA以上に厳格な規制を制定しました。2011 年には、中国やロシアを含む多くの国が賄賂を禁止する法規制を制定しています。グローバル企業にとって、これらの新規法規制はコンプライアンスの要求レベルを上げています。

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主要な考慮事項

賄賂禁止法に違反すると、刑事・民事上の法執行、利得の没収、巨額の制裁金、入札の停止、個人には実刑、会社のレピュテーション低下をもたらします。これらの制裁を回避するために、企業は従業員やエージェントによる不適切な支払を予防・発見する賄賂防止プログラムの導入を検討する必要があります。プログラムの中には通常以下が含まれます。

  • リスク評価 適用されうる法規制の要求事項及び特に腐敗度の高い地域において従業員やエージェントが外国公務員や他企業に対して贈賄を行うリスクを識別します。贈賄リスクを評価するに当たっては、企業がビジネスを遂行する国のリスクプロファイル(文化・政治・法制度等)、政府・他企業との関係(政府・他企業とのビジネス関係)、さらにはビジネスを遂行するためになされる支出の内容(許認可・監督庁による調査等)を検討します。
  • 取締役会の監視 取締役会は、潜在的な贈賄リスクを積極的に理解し、贈賄防止コンプライアンスプログラムを監視しなければなりません。
  • 上級経営者による監督 コンプライアンスプログラムの監督は、選任された上級経営者が十分な資源をもって実施し、コンプライアンスに関する継続的な「トップの姿勢」の明示・周知徹底に努めなければなりません。
  • ポリシー・基準・手続・報告システム グローバルな贈賄防止のポリシー・基準・手続・報告システムを文書化し、従業員にその重要性を周知徹底しなければなりません。贈賄防止違反やその懸念について、従業員が速やかに上申できるような内部通報システムを整備しなければなりません。贈賄リスクプログラムは画一的なものでなく、企業のビジネスの性質によって左右されるものです。
  • デューデリジェンス 従業員、ベンダー、サプライヤー、ビジネスパートナー、代理人、サードパーティーエージェントに対し、適切なデューデリジェンスが実施されなければなりません。
  • 有効な内部統制及びモニタリング 会計帳簿記録や現金勘定に対する有効な統制を含む適切な会計処理についての内部統制が重要です。財務・業務プロセス内の贈賄防止コントロールに対する積極的なモニタリングがなされ、潜在的な兆候(レッドフラグ)の識別・報告がなされなければなりません。企業全体においてコンプライアンスが達成されるよう、贈賄防止プログラム、ポリシー、手続、コントロールに対する定期的な監査の実施を推奨します。
  • 周知徹底・研修・意識向上プログラム 企業内におけるコミュニケーションを通じ、賄賂は一切許容しない旨周知徹底されなければなりません。適切な行動及び法規制の内容について、従業員、第三者エージェント・コンサルタントに対する意識向上研修を実施しなければなりません。
  • 調査・懲戒措置 潜在的な贈賄違反についての調査・改善措置を行い、さらにはグローバル贈賄防止コンプライアンスポリシー違反者に対する懲戒措置を常時実施しなければなりません。

企業は、企業及びそのエージェントが適用される贈賄禁止法規制を遵守し、適切な内部統制システムの導入を合理的に保証できるように、リスクベースでポリシー・手続を確立しなければなりません。

以下は、企業の事業の性質に固有のリスクに応じ、取締役が考慮すべき事項です。

  • 経営陣は企業の主要な贈賄リスクを定期的に識別・優先付けしているか。
  • 経営陣は通常事業において企業が贈賄を犯しうる状況は何か理解しているか。
    • リスクの高い国で遂行されるビジネスについては、経営陣は当該国において贈賄にて摘発された場合の危険度を評価しているか。
    • 経営陣はこの評価結果を元に企業の予防・発見体制を強化しているか。
    • 高リスク国での事業を廃止するべきではないか。
    • 経営陣は、母国外における新しい法的要件が事業にどのような影響を及ぼすか検討し、コンプライアンス態勢を強化しているか。

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