Risk Oversight vol.20 (日) 「リスク戦略を策定する」

リスク戦略ステートメントとは、経営陣と取締役会の間で、 企業が戦略を遂行する上でとるべきリスクについて共通 理解を醸成するものです。

日本語版PDF         英語版PDF

主要な考慮点

プロティビティの「取締役会のリスク監視サーベイ」の結 果によると、取締役会が許容するリスクレベルについての 対話が十分になされていると回答した企業は14%に過ぎ ませんでした。全てのリスクが定量化できるわけではな いので、リスク戦略を策定することは必ずしも容易ではあ りません。そのため、金融業以外の企業でリスク戦略を 明確に表明している企業は少数です。

しかし、明確には表明していなくても、現実にはあらゆる 企業がリスクを受け入れています。リスク戦略を策定す るに当たっては、自社のリスクテイクに関する傾向を分析 し、自社の経営戦略やビジネスモデルと照らし合わせるこ とから始めることをお勧めします。例えば、経営陣・取締 役会にとって許容しがたいリスクとは何か、M&Aその他 の投資限度は何か、特定の事業には進出しないなどの 方針があるか、等の視点が必要です。これらの要素が、 リスク戦略の議論を始める基盤となります。

リスク戦略の要件を確定するには、以下を含むべきです。

1. リスクに見合うリォードがあることから、許容しう るまたは戦略に合致するリスク

例えば特定の国地域への投資、新規工場の設立、雇用の増進する等、企業が成長のために必要な 方策です。これらのリスクについては、通常、投資 の限度額、期限等、リスク許容指標値が設定され ます。

2. 必ず避けるべき、企業にとって許容し得ない、または戦略に合致しないリスク

例えば、投機目的のデリバティブの利用や金融商 品の制限、取引先に関する規制等、経営方針とし て制約が科される例が多く見られます。これらの リスクは許容しないことを敢えて明示することも あります。

3. 経営陣が事業を遂行しリスクをとる上で参考と なる指標値(パラメータ)

事業計画の立案や戦略上の優先順序づけ、さらに ビジネスプランの遂行にあたり、指標値(パラメータ) が意思決定に重要な役割を果たす影響することに なります。経験したことのない問題が生じた場合に は、指標値は経営陣と取締役会において協議する 上での指針ともなります。指標値は、リスクを受け入 れるにあたってのフレームワークとなります。通常、目 標値・許容範囲・限度額等として、以下の指標が考 えられます。

  • 戦略上の指標値:企業が新規開発すべき、または開発を避ける べき新製品や、設備投資、M&Aのための投資 プールが該当します。
  • 財務上の指標値:許容できる損失・業績変動幅を示します。例え ば、一株あたり利益の変動幅、フリーキャッシュフ ロー額、EBIT、総資本利益率(ROA)・投下資 本利益率、負債格付け目標、負債資本比率目 標、EBIT利息率等が該当します。
  • 業務上の指標値:操業度管理、事業継続性、研究開発投資、環境 上の要件、安全上の要件、品質上の要件や顧 客関連があります。​

上記が合わさって、企業のリスク戦略の枠組みを形成し ます。企業が受け入れようとするリスクが示され、これら のリスクを含む指標が経営陣や取締役会にとってより明 確になります。リスク戦略は経営陣を束縛するのではな く、新たな価値を創造する機会について協議するための ベンチマークなのです。

以下は、企業の固有リスクに応じ、取締役会が考慮すべ き事項です。

  • 取締役会は、自社の戦略、戦略の前提条件・固有リ スクを理解し、かつ対応しているか。
  • 戦略目標を達成する上で許容しうるリスクについて 経営陣と取締役会の間で定期的なコミュニケーショ ンがとられているか。
  • 定性的・定量的方法で自社のリスク戦略を明示して いるか。状況の変化に応じて見直されているか。
  • リスク戦略の提示により、経営陣が自社のリスクテイク に関して適切な限度を設置できていることを取締役 会は確認しているか。​

プロティビティは、取締役会や経営陣がリスク戦略を決定 する支援を実施しています。当社は、企業のリスク戦略 に関するコミュニケーションの開始・継続を支援し、レピュ テーションやブランドイメージを低下させうるリスクを識別・ 優先付けする支援をします。

全ての関連情報は

こちらへ
Loading...