Risk Oversight vol.2 (日) 「全社的リスクアセスメント」

経営戦略の遂行において、今ほどリスクの性質や規模の 透明性が要求されている時はありません。リスク監視プ ロセスの最初の質問は、「我々が抱えている最も重大なリ スクは何か」です。有効に機能しているリスクアセスメン トプロセスであれば、不安定な経営環境の中でも、経営 者はこの質問に対して明確に答えられます。さらに効果 的なプロセスがあれば、経営者が質問の答えに対して実 質的な根拠を有しているとの取締役会からの信頼に繋 がります。

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主要な考慮点

全社的リスクアセスメント(ERA)とは、一定期間内に組織 の目標を達成するために起こり得る将来事象の影響度と 可能性を、体系的かつ先進的に分析することです。

  • このプロセスは、まずリスクを理解するための背景とし て企業の事業目標と共通リスク言語を規定し、リスク評 価のための基準を提供することから始まります。その 後、経営者が特定した起こり得る将来事象およびシナ リオを考慮した上で、目標達成に対する影響度と発生 可能性に基づき、グリッドまたはマップ上に表示します。
  • 影響度を評価する際に、リスクの重要性をわかりやすく 事前に設定された基準に基づいて評価します。例え ば、ある生活用品メーカーでは、今後 3 年間において 戦略的な目標達成に潜在的影響を与えるリス クの影 響度を評価します。グローバルなセメント生産会社で は、事業単位ごとに事業計画を遂行するための能力に対するリスクの潜在的影響を考慮します。他の企 業では、潜在的な財務的影響、つまり収入やキャッシュ フローの減少へと繋がる潜在的損失を考慮します。ま たいくつかの企業ではブランドの低下や株主価値の減 少のみならず、リスクを負うことに対しての重要な潜在 的機会も考慮します。
  • 発生可能性を評価する際に、将来起こり得る事象や それに関連する2つ3つの事象の発生可能性を、入手 可能な情報や主要関係者の判断に基づいて評価しま す。
  • 影響度と発生可能性を評価する際に、対象期間を明 確にしなければなりません。ある企業は今後 3 年間の 事業戦略遂行に対するリスク評価を行うかもしれませ ん。 また、別の企業は今後 1 年間の事業戦略遂行 に対するリスク評価を行うかもしれません。例えば製 造能力不足のような課題は、製造業にとっては短期的 には厳しい課題となります。しかし、製造能力を含む多 くのリスクは、長期的には企業が調整可能な柔軟性を 持っているのでそれほど問題とはなりません。

評価結果はリスクマップ、またはヒートマップと呼ばれる柔 軟な可視化ツールによって描写されます。有効なリスクア セスメントプロセスであればリスクの特定だけに留まらず、 リスク対応を策定しギャップを埋める方向へと進みます。

自社の全社的リスクアセスメントプロセスに対する信頼性を評価するために取締役会が検討を要すべき事項を以 下に示します。

 取締役会は、経営者が事業戦略に内存しているリスク を特定するために、事業環境の変化を定期的に評価 していると満足しているか。取締役会はそのプロセス(特に新規事業の買収、新規市場への参入、新商品 の導入、または基本的戦略の前提の変更の際)に十 分に関与しているか。​

  • 経営者は、企業のリスクプロファイルにおける重要なリ スクや重大なリスクの変更について、取締役会に適時に報告をしているか。新たなリスクを特定するプロセス が備わっているか。それは対応計画の検討に結びつ いているか。
  • 取締役会は企業が抱える最も重大なリスクについて認 識しているか。取締役会はこれらのリスクが何故重大 なのかを理解しているか。役員は企業のリスク対応を 理解しているか。この質問の回答根拠として役員が提 示できるような、企業規模のプロセスが備わっているか。
  • 経営者のリスク選好と組織体のリスクプロファイルが一 致しているかどうかについての協議が、取締役会レベ ルで定期的に行われているか。戦略設定プロセスは、 企業が戦略達成のために取るリスクの実質的な評価 を適切に考慮しているか。

プロティビティは、取締役会や経営者による全社的および 事業単位におけるリスクの評価やリスク管理能力の評価 を支援しています。企業評価、ブランドイメージ、企業価値を損ねるリスクを特定し、リスクの優先順位付けを支援 しています。プロティビティのミッションは、企業の戦略遂行において、より優れた洞察とリスク管理を通して、企業 の事業戦略の達成を支援することです。

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