Risk Oversight vol.18 （日） 「継続的なリスク監視」

主要な考慮点

取締役会が企業の戦略・業務・リスクに関連して、リスク 監視プロセスを継続的に改善していくうえで考慮すべき ポイントを整理しました。

リスク評価は常に新鮮であること

上級経営層や取締役会に対し、新規リスクについて報 告するプロセスが存在すれば取締役会も安心です。例 えば、グローバル化に関連して、新たに発生するグローバ ルリスクを、経済的リスク・地理的リスク・社会的リスク・テク ノロジーリスクに分類する研究もあります。この分類も、 競業他社の行動、消費者行動の変化、サプライチェーン の変化、人材供給の変化等、市場関連リスクによって補 完することができます。ビジネス環境の変化に伴い、これ らのリスクは企業が自社のビジネスモデルを遂行する能 力に影響するかもしれません。したがって、リスク評価プ ロセスも、これら変化の影響に合わせ、随時更新する必 要があります。

主要全社的リスクに留意する

経営者と議論するために、取締役が情報を必要とするリスクもあります。企業の戦略やビジネスモデルの有効性 を脅かすリスクは、取締役会のリスク監視においても優 先順位が高いでしょう。これら、例えば金融機関における クレジットリスク、製造業におけるサプライチェーンリスク、 製薬業における研究開発リスク等は重要なリスクである ため、リスクの変化や新規リスクの出現を識別するプロセ スが必要です。これらのリスクに対応するのは経営者の 責任ですが、取締役会もまたリスクを理解するためにどの ような情報を必要とするか検討しなくてはなりません。例 えば、取締役会は、主要戦略目標達成に関するリスクの 影響、蓋然性、速度、継続性及びリスクの緩和策につい て経営者に報告を求めるかもしれません。他にも、技術 の陳腐化に関するリスクや、時間経過に伴うリスク評価 の変更などもあるでしょう。その他の日常業務に関するリ スクは、例外的な場合に取り扱うか、特別委員会に委任 してしまう方法もあるかもしれません。

外部変化の影響を検討する

取締役会は、企業の戦略リスクや不確実性を評価する ため、企業戦略の主要前提条件に関する大局的な思考 を推進すべきです。リスクの高い現在の環境にかんが み、取締役会は、企業戦略の主要前提条件に着目した 評価手法を用い、自社が「わかっていないこと」は何か考 える時間をもつことも重要です。これによって、リスク監視 プロセスをさらに深化させることができるでしょう。

リスク選好についての協議を継続する

過去数年、企業を取り巻くリスクのレベルや不確実性は 大きく変化したことにかんがみ、取締役会及び経営者は、 定期的に企業のリスク選好について協議することも有意 義でしょう。これらの協議の対象としては、特定の事業領 域における業績変動幅、財務・業務指標、特定トピックに ついての議論、ビジネスプランの困難なところや弱いとこ ろ、所与の事業機会に即してあるべきリスク選好等が考 えられます。

定期的報告を要請する

リスク報告は、リスク監視において取締役会が建設的に 関与し続ける上でもっとも重要な事項の一つです。取締 役会の特定のニーズにより、リスク報告の充実は有用か もしれません。リスク報告を充実する例としては、主要外 部変化が企業に及ぼす影響、経営者のポリシーの例外 や主要リスクの限度、主要リスクを管理するための主要 なギャップやこれらギャップに対応する手法などがありえ ます。

リスク問題を適時に上程・検討する

リスクに関連した事項を企業のオペレーションに即して取 締役会に上程することは、リスク監視プロセスにとって重要です。例えば、取締役会は企業の既存のリスク許容 度の例外やニアミス、さらにはポリシー違反及びその改善 策について、いつ・どのような条件で報告を受けるのか検 討するのもよいでしょう。

プロセスの有効性を評価する

ビジネス及びリスクの性質に応じ、取締役会は定期的にリ スク監視プロセスを自己評価すべきです。

以上は、取締役会が、単なる年次リスク評価を超えたリス ク監視プロセスを継続する上で、具体的な観点となるで しょう。