Risk Oversight vol.14 (日) 「COSOリスク監視サーベイの結果」

COSOによるスポンサーの下、プロティビティは 200 人以 上の取締役に対し、リスク監視の現状に関するサーベイ を実施しました。サーベイ結果は、企業のリスク監視プロ セスを改善する方法について示唆に富んでいます。

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主要な考慮点

サーベイ結果では、取締役会のリスク監視の有効性は企 業ごとに異なる実態が判明しました。自社の取締役会は リスク監視に熱心で、高い効果を発揮していると考える 取締役も多い一方、大多数の取締役は自社の取締役会 は成熟した強固な監視プロセスを実施できていないと感 じています。また、上場企業において回答結果がやや 良好であったことから、上場企業のほうがリスク監視への 取り組みが先進的であると考えられます。しかし他方で、 以下のように現状に対する不満が多く寄せられる領域も あり、これらの領域においては取締役のリスク監視を改 善する余地があるといえます。

リスク監視プロセスをより強固にする余地がある

自社のリスク監視プロセスについての質問に対し、「有 効」または「とても有効」との回答は過半数を超えていま したが、他方、主要リスクをモニターして取締役会に報告 するためにはより体系的なプロセスが必要であるとの回 答も多く見られました。事業戦略の前提条件や内在す るリスクを把握し、問いを投げかけ、戦略に関する状況変 化をモニタリングするプロセスがあるとの回答は半数以上でしたが、他方、取締役会はこのプロセスに完全に満 足しているとの回答は15      パーセント未満でした。

取締役会へのリスク報告を強化する余地がある

自社の取締役会が最低毎年 1 回は報告を受けるリスク 項目や、全く受けることのないリスク項目についても回答 が得られました。取締役会が毎年 1 回は報告を受けて いる項目で特に多かったのは、企業全体及び事業部門の トップリスクの要約、経営者がリスクを評価・優先付け・測 定する手法の概要、取締役会が注意すべき新規リスク の要約などがありました。ほとんどの取締役会が報告を 受けていない項目には、企業に影響を及ぼす主要な外 部変化の影響を測定するためのシナリオ分析や、経営者 の方針に対する例外や主要リスクの限界、主要リスクを 管理する能力についての重要なギャップ及びこのギャッ プに対応する状況の要約などがありました。また、回答 結果によると、毎年報告がされない項目については、必要 に応じて報告がなされるのみか、または全く報告がされな いことがわかりました。この結果からは、企業の業務及び リスクプロファイル、さらには取締役会の特定の要請に応 じて、リスク報告プロセスを改善し、報告の頻度を増やす 余地があることが判明しました。

リスク選好対話を改善する余地がある

サーベイ結果によると、多くの企業において企業のリスク 選好(言い換えれば、企業がその事業モデルを実行する上で設定した限界を理解すること)をより理解するための 取り組みがなされつつある実態がわかりました。他方、 サーベイ結果からは、取締役会及び企業はより活発な対 話プロセスから恩恵を受けることができることもわかりまし た。回答からは、企業はとりうるリスクについて定期的対 話を持っていることが多いことが示されましたが、それが 取締役会の目的に沿っているとの回答は14 パーセントに とどまりました。もっとも、満足であるという回答は上場大 企業の取締役からの回答が高く、これらの企業における リスク監視プロセスの成熟度を示す結果となりました。

リスク管理プロセスのモニタリングを改善する余地 がある

3 分の2 近くの回答は、取締役会による企業のリスク管理 プロセスのモニタリングが全くなされていないか、断片的 でしかないとの結果でした。約半数の回答は、企業のリ スク管理システムが十分なリソースを与えられているかに ついて取締役会が定期的に評価する公的プロセスが存 在しないと回答しています。上場企業においてはより肯 定的な結果が得られ、より強固なモニタリングがなされて います(全体で 64 パーセント、10 億ドル以上の年次売り 上げがある上場企業では74 パーセント)。また、取締役 会のリスク監視プロセスに経営者が適時に情報を提供 するプロセスが存在するとの回答がほとんどでしたが、他 方、大多数はプロセスに改善の余地はあると回答して います。

多くの企業では、取締役会への重要なリスク事項の

伝達に改善の余地がある 回答結果によると、企業がリスク限界を超えたときに取締 役会に伝達するプロセスを改善する余地があり、また新 規リスクが適時適切に対応されるようプロセスを改善す る余地が見られました。

取締役会は、リスク監視プロセスを改善し、より頻繁 に自己評価する余地がある

回答の 3 分の 1 近くは、自身の監視責任を果たしている かについて取締役会によるリスク監視プロセスの自己評 価は行われていないとの結果で、さらに3 分の 1は断片 的にのみ行っているとの結果でした。自己評価が強固 で成熟し、取締役会が満足しているとの回答は10 分の1 以下でした。

本サーベイにより、とくに上場大企業において、取締役 の多くは取締役会のリスク監視が効果的に運用されて いると考えていますが、他方ほとんどの企業において 改善の余地や、考慮すべき問題が判明しました。サー ベイレポート全文については、Board Risk Oversight– A Progress Report, をご 覧くださ い。

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