Risk Oversight vol.10 (日) 「リスク管理を戦略策定と業績管理に統合する」

リスク管理を戦略策定・業績管理へ効果的に統合するこ とにより、経営者は自社の戦略に内在するリスクを適切に 把握し、それに対応し、モニターする組織的な対応能力 に自信を高めることにつながります。その結果、経営者 がいっそう積極的に機会を追求することが可能となるの です。適切な方法論を活用することによって、戦略遂行 が思うようにうまくいかない可能性を理解し、さらに最悪の シナリオが顕在化した場合の損失の大きさを把握でき、 自社が何に注視すべきかが見えてきます。これは、リスク に関わる全ての人にとって重要なメッセージとなります。

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主要な考慮点

先に戦略を策定し、その後にリスクを評価していたので は、リスク管理は意味をなしません。後には現実味性の ない戦略目標と、単なる業績管理の付属としてのリスク管 理が残るだけです。最近の金融危機は、このような統合 の失敗例であふれています。統合の失敗は、実行不可 能な戦略や、創出に数年要する企業価値の損失に結び つきかねません。

リスク管理と戦略の統合は決して容易ではありません。 鍵となるのは、変化する経営環境に適応しつつ、企業価 値の創出と保全がバランスよく推進できるよう、柔軟性の ある組織構造やガバナンス体制を確立・維持することで す。ガバナンスの要素には「戦略の策定」と「リスクの評 価」のプロセスがあります。「戦略の策定」では、企業の 戦略的な意思を明確にし、戦略実現に必要な差別化を図る能力やインフラを識別します。「リスクの評価」では、 戦略に固有で主要なリスクを特定し、リスク選好に関する 協議・検討の基盤となります。

戦略策定とリスク評価の統合プロセスは、経営者と取締 役会が連携する絶好の機会となります。その際、企業の 主要な指標・目標の設定に関する質の高い情報共有が 行なわれることから、リスク管理と業績管理の統合が始ま ることになるのです。リスク管理と業績管理が統合され ることにより、主要業績指標(KPI)と主要リスク指標(KRI)が連動し、実際の業務執行で利用されるバランスト・ス コアカードなどの主要指標との整合性も向上します。た とえば、ある企業においては、先延ばしにされたメンテナ ンスのレベルが、環境・健康・安全リスク増大の主要な指 標となる、という具合です。

リスク許容度も業績管理と連動して設定される必要があ ります。一旦主要な指標・目標が設定されれば、全社・部 門・機能の各レベルにおける活動が連動するように経営 計画が策定されるようになります。そして、この経営計画 には、主要リスクに対する適切なリスク対応も含まれます。 戦略に、焦点を当てたリスク対応が含まれることで、戦略 の実現可能性と説明責任も最大となるのです。

統合を実現する計画が策定された後は、経営成果は設 定された指標や許容度に対してモニタリングが行なわれ ます。モニタリングにより、戦略遂行の把握に要する情報 が識別され、それが取締役会のリスク監視プロセスに活 用されることになります。なお、許容度からはずれたり、目 標に届かなくなるような事象の発生時に、迅速に対応でき るようなテクノロジー基盤が通常必要となります。

企業が急速な成長や持続的な競争優位を実現するた めには、リスク管理と戦略策定・業績管理を統合すること による戦略の実現可能性の向上を目指すべきでしょう。

自社のリスクの性質に照らし、取締役会は以下の事項を 検討するとよいでしょう。

  • 以下を示す事項が存在しないか
    • 主要な経営プロセスとリスク管理が連携していな い
    • 戦略を妨げる極限リスクシナリオを検討するプロ セスが存在しない
    • 許容できないリスクテイクや無意味なまでのリスク 回避が存在する
    • リスク対応と全社的業績管理が連携していない
  • 経営者がリスク管理と戦略・業績管理を統合している か。していなければ以下の努力が行われているか
    • 自社の戦略に内在するリスクを事前に特定し、そ の源泉を明確にし、軽減策をとっているか
    • リスク対応を含めた戦略が全社的に整合性を もって伝達・実行されているか
    • 主要リスクの管理を含め、企業のオペレーション に必要な透明性が確保されているか

プロティビティは、取締役や経営者のリスクの評価・管理 を支援します。私たちは、企業のレピュテーションやブラ ンドイメージの毀損を防ぐため、リスクを識別し、優先づけ る支援をしています。私たちの目指すところは、戦略に 内在するリスクの識別・管理を向上させることで企業の 戦略を確実なものとし、かつ、リスクやリスク管理を企業の コアとなる経営活動と統合することです。

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