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解説:2018年の重要リスクに関する経営者の見解「Executive Perspective on Top Risks for 2018」サーベイ結果

グローバル・コンサルティングファームのプロティビティとノースキャロライナ州立大学のERMイニシアティブは、毎年、取締役ならびにその他の経営者を対象として、翌年に懸念されるリスクについてのサーベイを行っていますが、今般、2017年秋に実施した第6回サーベイ結果が公表されましたので、ご紹介します。

<米国プロティビティが、昨年12月7日に公表したプレスリリースの翻訳文>
同サーベイによれば、世界の企業の取締役ならびにビジネスリーダーが懸念する2018年に向けての重要リスクとして、「技術革新、破壊的イノベーションの急激な進展」と、「変化に対する抵抗」がトップ2にランクインした。

(本文)
本日公表された「2018年の重要リスクに関する経営者の見解」は、本サーベイに参加した世界各国728名の取締役ならびに上級経営者が抱いている懸念事項を評価したものである。本サーベイの結果では、ますます進展する「破壊的イノベーションへの懸念」の得点が、過去数年の間、取締役・経営者が、常にトップリスクとして認識していた「経済の不確実性」や「規制当局による執行強化に対する懸念」を大幅に上回った。

また、「サイバーセキュリティに関する脅威」は、特にWannaCryなどのランサムウェアによる攻撃や、米国最大の信用情報サービス会社Equifaxなど大手組織を標的としたサイバー攻撃に見られるように、ビジネスリーダーにとってのトップリスクとなっている。特に注目すべきことは、業種にかかわりなく、取締役の方々が、2017年に比べ、2018年のリスク環境を大きな危機感を持って捉えているということである。

「ディスラプション、デジタル・トランスフォーメーションが全ての業界で進行しており、これらがコアのビジネスモデルにとっての脅威となっている。」と、Pat Scott(EVP of Protiviti)は語る。更に、「我々のこの直近のサーベイによって、組織に対する最大の懸念事項について大きなシフトが起きていることが明確になった。新たなテクノロジーの出現が現行のビジネスモデルに与えるインパクトについて心配し、自社の競争力が損なわれることを懸念する取締役・経営陣らにとって、“デジタライゼーション関連リスク”は、従来リスク項目リストの上位にあった“経済環境”や“規制の強化”などの項目に完全に取って変わったと言える。」と続けた。

また、Jim DeLoach(Managing Director of Protiviti)も、「もはや、“デジタル変化があなたのビジネスをひっくり返すことはあり得るだろうか”という問いではなく、“何時それが起きるのか”を心配する時期に来ている。多くの企業は、既に正しいデジタル戦略を整えようと努力しているとは思うものの、現行のビジネス環境の中で、自社が自ら破壊的変化を遂げることが可能となるよう、デジタル・トランスフォーメーションを組織のコア部分として位置付けることが求められている。このリスクに加え、組織における“変化への抵抗に関する懸念”が企業の取締役・経営陣にとって容易には解決できそうにもない挑戦となっている。ビジネスリーダーたちは、“変化のスピードについていけなければ、自社戦略について道筋をつけられるどころか、世の変化の犠牲者となるだけだ”ということをよく知っている。」と話している。

<2018年のトップ10リスク>
今回のサーベイにおいて識別されたトップ10のリスクは以下の通りである。

  1. ビジネスモデルを大幅に変更することなしには、破壊的な技術革新や新規テクノロジーの急激な進展が、会社の競争力やリスクを管理する能力を上回ってしまう恐れがある。
  2. 変化に対する抵抗が、会社のビジネスモデルや中核事業に対する必要な調整の妨げとなる恐れがある。
  3. サイバー攻撃の脅威に対処する準備が十分にできていない恐れがある。
  4. 法規制の変更並びに、規制当局による執行強化によるリスク
  5. 自社の文化が、リスク事項に関するタイムリーな特定や報告を十分に促すものではない恐れがある。
  6. トップの後継者問題や、有能な人材を確保し、引き留める能力が不足しており、事業目的の達成を制限している恐れがある。
  7. 個人情報の管理や、情報セキュリティシステムの保護を確実なものにするためには、著しい数の要員を投入しなければならない恐れがある。
  8. 現在自社が商品やサービスを提供している市場の状況が、会社の成長機会を著しく妨げる恐れがある。
  9. 市場の戦略的情報を確保し、生産性や効率性を向上させる目的で、データ分析やビッグデータを使いこなすことが出来ないために、中核事業のマネジメントや、戦略計画の実行に深刻な影響を与えてしまう恐れがある。
  10. 現在のオペレーションが、品質、コスト、技術革新に関して期待されるパフォーマンスを達成できない、あるいは、特に“ボーンデジタル企業”や、低コスト体質を獲得している新規参入の競争会社に対処できない恐れがある。

業界別に見ると、金融関係とエネルギー・ユーティリティ関連業界において、2017年に比べると「リスク全般への懸念」について最も大きな減少が見られた。これは、サーベイ結果によれば、「マクロ経済に関するリスク」と「規制の変化への懸念」が後退したことが大きいと思われる。テクノロジー、メディア、情報関連の産業において、「リスク全般」についてのインパクトや損害の大きさに関する懸念が最も高くなっていることが分かった。

「リスク項目のシフトのトレンドという観点からは、特に興味深いことに、自社のリスクを特定し上級経営者層に報告するというプロセスが、企業のカルチャーとして十分行われていないのではないか、との懸念がサーベイ回答者の間で高まっている。」とDr. Mark Beasley (Deloitte Professor of Risk Management and director of NC State’s ERM Initiative)は語る。彼は更に続けて、「取締役や上級経営者が、新しく勃興しつつあるリスク項目への理解を深めようとすればするほど、リスクの特定、報告がしっかりと確実に行われるべきであるという目標に対し、自社のカルチャーが阻害要因となっていないか、再評価することを迫られている。」とも述べている。

「2018年の重要リスクについて経営者の見解」に関するサーベイは、2017年秋に実施され、回答者としては、米国並びにその他世界各国の企業、公的機関の代表者を対象とした。調査報告書は、企業のサイズや、業種、あるいは回答者の職位別などにブレークダウンされた分析も含まれている。

本サーベイのレポート(英語)はこちら

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(特集記事:メールマガジン2018年1月号)

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