解説: ​2015年の重要リスクに対する経営者の見解「Executive Perspectives on Top Risks for 2015」サーベイ結果

プロティビティとノースキャロライナ州立大学のERMイニシアティブチームは、2015年の潜在的リスクに対する見解を提供するため、270人以上の取締役や経営者を対象に、マクロ経済リスク、戦略リスク、業務リスクに関するサーベイを実施しました。

リスクマネジメントを追求する上での最初の問いは、「自社におけるもっとも重要なリスクは何か」というものです。この問いに対する企業の回答こそが、適切なリスクマネジメント能力の基礎となります。この調査は多様な業種を横断的にカバーし、様々な規模の組織の経営幹部に対して実施したもので、「2015 年の重要リスクは何か」という問いかけに対する洞察を提供しています。

<2015年のトップ10リスク>

  1. 法規制や規制当局の監視強化が会社の製品やサービスの提供方法に影響を与えるリスク(67%)
  2. 会社が対応しているマーケットの状況が会社の成長の機会を著しく制限するリスク(56%)
  3. 中核の事業や会社の評判を著しく毀損しかねない、サイバー攻撃に十分に備えていないリスク(53%)
  4. 後継者の選定や、才覚あるトップにふさわしい人材の獲得・維持能力の不足が、事業の目標を達成する上で障害となるリスク(56%)
  5. 会社の文化が中核事業ならびに戦略目標の達成に著しく影響を与えかねないリスク事項を適時に識別し、報告することを十分に助長していないリスク(51%)
  6. 変革に対する社内の抵抗が、中核事業やビジネスモデルに対する必要な調整を阻害するリスク(49%)
  7. 個人情報管理および情報セキュリテイを行うのに多大なリソースを必要とするリスク(52%)
  8. 会社の評判に著しく影響を与える想定外の危機に対処する準備が十分でないリスク(46%)
  9. 顧客のローヤルテイを維持することが進化する顧客の嗜好や客先の地理的移行により難しくなりつつあるリスク(48%)
  10. 現行事業が競合他社のように品質・納期・コスト・技術革新に関連する期待に応えられないリスク(46%)

調査回答全体を俯瞰すると、2015年のビジネス環境は前2年に比べてリスクが少ないようですが、多くのビジネスリーダーはリスク管理の要員を増加させることを示唆しています。また、現行のリスク環境に関して、取締役会・経営者チーム間で異なった見解をもっていることがわかりました。即ち、CEOと取締役会はリスク事項に関して楽観的ですが、CFOやCAE(内部監査部門長)はビジネス環境はよりリスキーと見ています。法規制はリーダーにとって引き続き最も留意を要する事項ですが、一方で注意を払うべき新しいリスクが他にもあると受け止められています。

取締役会や経営者チームとの継続的会話に基づいて、本年度の調査では新しい5つのリスク分野を追加しましたが、そのうち①リスクの懸念を識別し、報告することを助長する会社の文化と能力、②進化する顧客嗜好の状況下における客先確保がトップ10リスクの中にはいっています。これは、コーポレートリーダーの考え方や優先順位づけの変化を示唆しており、取締役会は2015年においてこれらの分野の監督を強化することが望まれます。

本レポートは、特定のリスクパターンへの認識に関する綿密な分析を提供し、組織の規模、所有形態、業界、回答者のポジションなどのカテゴリー別に回答の違いを特定、論議するものです。

今後もこのリスクサーベイを定期的に行い、組織経営者の心を悩ます重要リスク問題を追跡していくとともに、長期間にわたってリスクのトレンドを観測していく予定です。

(メールマガジン2015年3月号)

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