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解説:米国金融業界におけるパンデミックを管理するために学んだ教訓

プロティビティとSifma(Securities Industry and Financial Markets Association:米国証券業金融市場協会)は共同で、米国の金融業界がCOVID-19の脅威にどのように対応したかを情報収集し、成功例、失敗例を紹介しながら今後への教訓や課題をまとめました。米国金融業界は2001年の9.11以降大規模な災害発生時における危機対応に努め、パンデミックへの備えもそれなりにやってきた歴史があります。今回それらの備えが生かされた面もありましたが、新たに認識された課題も多くありました。本報告は全体を3つの分野に分け、過去の教訓や将来の仕事のあり方についても貴重なコメントが記載されています。以下は項目毎の考慮事項の要約です。

1. Go-Forwardオペレーティングモデル

  • 遠隔地からの労働力の構築
    自社の在宅勤務の結果についてきちんと事後評価を行う必要があります。慎重で安全な方法を採ればハイブリッド労働力モデルによる恩恵を受ける可能性もあります。これにより、パフォーマンスの高いチームがオフィスで物理的に対話できると同時に、リモートワークに柔軟性がもたらされます。これを実現するテクノロジーへの投資が運用効率の向上に結びつきます。
  • グローバルオペレーションのレジリエンスの強化
    グローバルな事業に堅牢性と回復力を構築し続けることで、企業はパンデミックを含む将来の主要なイベントをより適切に予測し、迅速に対応できるようになります。
  • 自動化による運用の最適化
    今回、外注先である第三国の対応に問題があり事業に大きな影響が出ました。人や紙に頼る業務がCovid19のために寸断されたからです。特にダウンタイムのリスクが最も深刻になる可能性のある運用領域をサポートするために、企業が自動化と重要なデジタルツールに投資して採用することが重要です。トランザクションプロセスの実行の自動化(仮想ロボットの使用など)は、回復が予想よりも遅い場合やパンデミックの第2の波によって再び封鎖が必要になった場合に組織を準備しながら、即時のメリットを提供できます。
  • 業界の規制環境の変化に敏感になる
    金融機関は今後の規制ガイダンスに引き続き細心の注意を払い、新しい要件を常に把握し、業界団体と協力してその改変につき規制当局にフィードバックを提供し続ける必要があります。

2. 新しいリスク領域の認識

  • 従業員の健康とウェルネスの確保
    従業員の健康とウェルネスは、企業、運用、財務、およびITのリスクとともに、組織の正式なリスク管理構造において最も重要な考慮事項である必要があります。それは在宅勤務であれ、出勤形態であれ変わりません。
  • 変化するITセキュリティ環境の再評価
    リモートの従業員に対応するために運用モデルを変更する場合、最高情報セキュリティ責任者(CISO)は、サイバーリスク、データセキュリティ、およびコンプライアンスに関連する優先順位を再評価する必要があります。CISOは取締役会や経営陣と協力して、新しい脅威に対する創造的なソリューションがスムーズに実装されるようにする必要があります。

3. 反応と回復力(レジリエンス)の強化

  • コミュニケーションと調整の強化
    金融業界は、危機管理上重要な利害関係者と主要な連絡先のグローバルディレクトリを開発するという目標を引き続き追求し、政府を含む関係機関が情報を共有できるように働きかけます。
  • 運用の回復力の構築
    グローバル化された運用を維持することの利点は、この危機でテストされました。今後、サードパーティのサポートを含め、これらのシステムは、運用の回復力の戦略と実践を取り入れて、堅牢性を高め、地理的およびベンダーの集中リスクを特定し、障害のリスクを最小限に抑える必要があります。 

(特集記事:メールマガジン2020年10月号)

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