解説:コロナ後の変化を見据えた監査委員会の議題とは

昨年の10月以降、金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」において、両コードの改訂に向けた議論が進められています。もともと予定されていた今回の改訂は、「コロナ禍」が引き起こした経済・社会構造の変化をふまえ、上場企業のガバナンス変革を一層強く促す内容になりそうです。特に注目されるのは、東京証券取引所の市場区分の再編で創設されるプライム市場への上場を選択する企業に関して、より高い水準のガバナンスや投資家との建設的な対話と情報開示の充実化を求める基準が同時に議論されていることです。

「フォローアップ会議」には、世界中の資産運用会社や年金基金で組織する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク (ICGN)のケリーワリングCEOが参加しています。今月のフォローアップ会議第25回では、(1)リスク管理、(2)監査の信頼性の確保、(3)プライム市場上場会社に求める主なガバナンスの水準に関して意見書を提出しています(リンクはこちら)。(2)の「監査の信頼性の確保」については、内部監査や外部監査に続き、監査委員会の委員の要件や職務権限に関する世界の機関投資家の期待を解説しています。欧米企業の監査委員会では一体どのような議論をしているのか、知りたいと思われた方も多いのではないでしょうか。

プロティビティは毎年、主に米国のお客様との対話や討論会を通じて現役の取締役の方々の見解を集約して、 「監査委員会の議題」 を公表しています。弊社ウェブサイトで公開している「2021年の監査委員会の議題」は以下のポイントを網羅しており、日本企業の取締役や監査役、CFO、CRO、内部監査部門長の方々にも参考にしていただけるはずです。

  • リスクの大きな変化をいかに掴むか。監査委員会は、日米企業共通の課題である「リスク要因開示」や、最近のリスク要因である社会的平等や公正性に関する動きにも留意します。
  • 次に、CFOとともに、財務機能のレジリエンス力(回復力)を確認します。レジリエンス力の必要性は、私たちがコロナ禍から学んだ教訓です。「取締役会のリスク監視シリーズ Risk Oversight 131 『ニューノーマル』の時代に、オペレーショナルレジリエンス(業務の回復力)をテコに変革を実現する」も合わせてご覧ください。CFOの役割は、コロナ禍を経て一層ひろがりつつあります。サイバーセキュリティや、プライバシー、その他の重要な優先事項への取り組みの戦略的パートナーになるよう監査委員会が働きかけ、「デジタルCFO」としての仕事ぶりもチェックします。 
  • コロナ禍やデジタライゼーションの進展を受け、内部監査機能も大きく進化し始めています。内部監査の変革を促すことも監査委員会の重要な役割です。
  • コロナ禍による会計と内部統制への影響や会計監査人が検討した主な事項は、特に注意深く分析する必要があります。
  • 監査委員会は当然のことながらESGの動向を注視しなければなりません。
  • 最後に重要なこととして、監査委員会は委員の構成や議題の有効性を自己評価することが求められています。

コロナ後は、変化が加速するはずです。コーポレートガバナンス・コードもそうですが、監査委員会には加速する変化への対応を促すことが大いに期待されています。 

(特集記事:メールマガジン2021年3月号)

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