グローバル内部監査基準を理解する(3回シリーズ)第2回:影響のある領域に焦点を当てる グローバル内部監査基準(以下、「新基準」)は、内部監査部門とステークホルダーの関係を大幅に変更することにより、適合性を維持しつつ、専門性を高めることを求めています。知っておくべきこと:内部監査部門のガバナンスには、内部監査部門長と取締役会、経営陣間の協働を高めることが必要です。キーポイント:内部監査部門はステークホルダーと協力し、戦略の方向性の設定や絞り込みを行い、協働についてのルールを再定義し、より正式な文書を保持する必要があります。取るべき行動:新基準が施行されるのは2025年ですが、必要な変更を評価し、移行計画を策定して開始するのは今がその時です。本ブログシリーズの第1回では、内部監査のステークホルダーを教育し、内部監査部門の効果的なガバナンスに資する協働を支えるのに必要な変革管理の基盤を構築することの重要性を強調しました。第2回は、皆様の組織に最も影響を与える可能性の高い主要な改訂点を要約し、新基準の適用を達成するのみならず、品質向上を推進するために、現行の実務を変更する必要がある領域をさらに詳しく探ります。また、新基準を活用することにより、内部監査部門長(CAE)や部門幹部の皆様が内部監査機能を高度化する機会を提供する領域についても解説します。 新基準にどのように取り組むべきか?最終改訂版は、公開草案ほど劇的な変更を伴うものにはなりませんでしたが、内部監査部門長は、内部監査部門内とステークホルダーとの関係の両方に大きな変更を加えながら、新基準への適合を目指す必要があります。さらに、内部監査人協会(Institute of Internal Auditors、以下「IIA」)の国際内部監査基準審議会(以下、「審議会」)は、今回の改訂は個別のパーツを積み重ねることによって全体的な品質を向上させて、「適合+パフォーマンス」 をもたらすことを意図している、ととらえるよう、内部監査部門関係者に勧めています。取締役会が承認する内部監査部門の業務遂行(パフォーマンス)の目標により継続的な改善を促すことで内部監査の専門職の水準を押し上げるとの目標のもと、審議会は、内部監査への要求水準を引き上げたいとの願望を力説しています。第1回では、内部監査のステークホルダーが、従前から比較的容易に達成できると認識されている単純な「一般的に適合している」の評価結果を超えて、どこまでこの継続的な改善を推し進めてほしいのかを議論しました。新基準は内部監査部門にどのような影響を与えるのか?変更された主要な領域とテーマを以下にまとめました。なお、本ブログは、新基準の完全な要約や適用に向けた詳細な評論を提供することを意図したものではないことをお含みおきください。これら4つの領域における改訂への対応には、さらなる分析と文書化が必要です。ガバナンス/負託事項と内部監査の戦略の領域では、内部監査の戦略上の優先事項と正式な戦略的計画の策定に関連することを含め、ステークホルダーとの協働を高める必要があります。 Image 新基準では、取締役会と経営陣、内部監査部門長が、内部監査部門への負託事項と業務遂行目標を定義することを含め、より多くの領域で協働することを求めています。また、取締役会に対して、当初の年次監査計画や予算、資源計画、これらの重要な変更、ならびに外部品質評価のアプローチを承認することを求めています。さらに、内部監査部門長に対して、内部監査部門の戦略的目標の策定と関連する取組みに一層注力するよう求めています。本ブログシリーズの第3回では、この内部監査部門における戦略(多くの内部監査部門において、従前から、差分あり)について、より詳しく解説する予定です。内部監査部門長は、取締役会や経営陣に求められるアクションをどのように整理するのか?新基準は、複数のセクションにおいて、内部監査部門長と取締役会、経営陣間の協働を高めるよう求めていることから、内部監査部門へのガバナンスに関する所管や協議、承認の要件を明らかにするため、これらの役割について新基準が要求し推奨する責任関係を下の表にまとめました。内部監査部門長は、このような要約表を活用し、コミュニケーションの手順や正式な承認の文書化に必要な調整を始めることができます。 Image 内部監査部門長が取るべき行動は何か?新基準が施行されるのは2025年ですが、必要な変更を評価し、移行計画を策定し開始するのは今がその時です。内部監査部門は、戦略の方向性の設定や絞り込みを行い、協働についてのルールを再定義し、より正式な文書を保持する必要があります。内部監査部門長がこれらを進めるために今からできる4つのアクションステップは、以下の通りです。理解する組織のアプローチがまとまり次第、実施プロセスの担当者は適用される基準の改訂点を読んで理解を深め、可能であれば部門の「品質のアシュアランスと改善のプログラム」を活用し、新基準の適用に向けて、マイルストーンとオーナーシップを明確にした計画を作成するべきです。また、IIAやその他の外部専門家、ネットワークの仲間からの教材源を活用し、あらゆる質問に対応できるよう理解を深める必要があります。IIAは、以下の参考資料を提供しています:Report on Proposed to Final StandardsFinal StandardsCondensed Mandatory Only StandardsGetting to Know the Internal Audit Standardsこれらは、時間をかけて検討し理解することを強くお勧めします。評価するギャップ分析を通して、現行の内部監査部門の活動とメソドロジーが新基準と異なる領域を特定することは、変更が必要な要素を特定し計画するのに役立ちます。基準の構造や構成が変わるだけでも、文書の更新は必要になります。また、メソドロジーの更新や新しい手順の導入が必要になる場合もあります。影響度とかかる手間の程度を把握することは、どの差分に最も早急に取り組むべきかの優先順位付けに役立つとともに、2025年1月の施行日に向けて、メソドロジーを更新するスケジュールの把握につながります。戦略を策定するこの機会に、下記のステップを実行することで、内部監査部門のビジョンや戦略的目標、それらを支援する取組を正式なものにして、強化します。経営陣や取締役会の意見を取り入れながら、内部監査の業務遂行目標を定める。部門の能力を戦略的に評価するにあたり、各種の支援を提供するテクノロジーを考察する。「品質のアシュアランスと改善のプログラム」を更新し、外部品質評価の計画を見直し文書化する。内部監査のメソドロジーを開発または改良して、根本原因を評価し、特定された課題の原因に対処するために発見事項に優先順位を付けて、必要な是正措置とフォローアップに関する実行可能なガイダンスを業務管理者に提供する。内部監査の戦略的計画を策定または見直すのは、内部監査部門のメンバー全員を巻き込む絶好の機会です。 内部監査部門の未来に関する意見を求め、わくわくする気持ちや一体感を醸成するのです。コミュニケーションを取る第1回で概説したステークホルダーとの協働に関するアプローチに基づき、内部監査への負託事項(内部監査の権限や役割、責任)の合意から始め、本ブログの内容を活用し、内部監査のステークホルダーと新基準に関する議論を継続していきます。ステークホルダーとの協働が求められる領域に関して研修の提供や各種の取組を継続すれば、望ましい結果を達成するために必要な連携を生み出し、維持することにつながるはずです。内部監査のグローバル基準の改訂に関する詳細は、こちらのウェビナー(英語)にご登録ください。(2024年5月20日)英語版ブログ「https://blog.protiviti.com/2024/02/20/focusing-on-impact-areas-understanding-the-global-internal-audit-standards-updates-part-2-of-3/」へのリンクはこちらグローバル内部監査基準を理解する(3回シリーズ)第1回: 内部監査のステークホルダーを巻き込んで適用に向けた基盤を構築するグローバル内部監査基準を理解する(3回シリーズ)第3回:適合からパフォーマンスへ Topics 内部監査/コーポレートガバナンス