解説:企業はいかにしてメタバースに備え、利益に繋げるのか

解説:企業はいかにしてメタバースに備え、利益に繋げるのか

~テクノロジーインサイトブログを翻訳してご紹介しています

近年、メタバースへの注目と投資が高まっており、多くの企業、スタートアップ、起業家がその可能性を探っています。しかし、メタバースとは何か、メタバースをどのように実際のビジネスに活用できるのかについては、いまだ混乱が続いています。その一因として、「メタバース」の正確な定義についてコンセンサスが得られていないことが挙げられます。

私たちは、メタバースとは物理的なものと仮想的なものが融合して創り出す、没入感のあるインタラクティブな「世界」であると捉えています。これは新しい概念ではなく、メタバースの背景にある主なアイデアは、60年以上前からコンピュータサイエンスに存在していました。そのため、一部のビジネスリーダー、特に取締役会レベルのビジネスリーダーは、メタバースがもたらす可能性や変化について懐疑的な受け止め方をしています。

メタバースがビジネスにもたらすもの

企業から見ると、メタバースは、さまざまな利点と機会を提供することができます。

新しい顧客エンゲージメントの方法

従来のメディアでは不可能だった没入感のあるインタラクティブな体験ができます。マスブランドや高級ブランドは、消費者を製品やブランド理念とつなげる環境やイベントを作ることができます。

トレーニングおよびアップスキルアップ

トレーニングや問題解決のツールとしてメタバースを活用することで、社員が最新のテクノロジー、ツール、プロセスを把握することができます。また、新しく入社する社員に向けたオンボーディングにおいて、職場環境をメタバース内に作ることにより、会社の一員として意識しながらトレーニングを行うこともできるようになります。

製造業

製造業はメタバースを利用して、生産ラインの「デジタルツイン」(※1)によるオペレーション業務改善により、効率を向上させ、コスト削減の機会を見出しています。デジタルツインは、物理的な生産サイクルが始まる前に、生産計画、テスト、最適化を行い、不具合を解決することができます。

コマース

AR/VRは、「エンドレスアイル」(※2)というEコマースのコンセプトを拡張することができますが、分散型金融(DeFi)(※3)と組み合わせると、メタバースは消費者が取引を行い、商品を所有するための新たな機会を提供することができます。ブランドは、店舗を構築し、販売を促進し、NFTを生成することでエンドユーザーと直接関わることができます。NFT は、収集品、ロイヤリティ指標、クラブ会員型の限定体験など、さまざまな形で提供されます。

今こそメタバースの活用を検討すべき理由

企業は環境変化に即応するためにアジリティ(機敏性)を求め、レジリエンス(回復力)と適応力を向上させながら収益を向上させる方法を模索しています。メタバースは、インタラクティブな体験の可能性を広げ、典型的な2次元のウェブやモバイルアプリケーションの平面より没入感のある体験を可能にします。メタバースにてオブジェクト、データ、インタラクションをコントロールする能力を得ることで、採用企業は素早く変化に対応することができます。

新興技術はインターネットの未来を牽引しており、Web3のようなコンセプトは、ユーザーの交流方法や情報の保存・保護方法を再構築し、変化させる可能性を秘めています。Web3は、分散型アカウンタビリティと自己主権型アイデンティティの概念を導入し、データの管理を中心に据えたデジタル世界を創り出します。その結果、個人はデジタル領域で交流しながら、プライバシーやセキュリティのコントロールと所有権をより高めることができるようになります。

メタバースのビジネス価値に対する懐疑な見方は、いまだにC-Suite(経営幹部)にあり、その多くは投資対効果に対する理解不足と不確実性が原因と考えられます。しかし、メタバースに進出する企業が増えれば、その懐疑心も薄れることでしょう。

メタバースに備えるには

メタバースは、テクノロジーやコンセプトの集合体であり、ビジネスの一部または複数の部分に関連する実用的なソリューションを示す明確なビジョンを確立することによって管理することができます。ここでは、企業が確実に備えるための方法をいくつか紹介します。

ビジョンを共有する

メタバースの導入に対して賛同を得るために、主要なステークホルダーとビジョンを共有することは最初のステップです。また、前に進めるためには、ステークホルダーが表明した懸念事項について、ビジョンを適応させ、道筋を示していくことが重要です。考慮すべき要素としては、予想されるROI投資収益率、パイロットプロジェクトの確立、ビジョンの達成を確実にするための投機的な段階からの移行という課題があります。

ビジネスリーダーは、リスクも考慮しつつ、コストと期待される成果を一致させる機会のポートフォリオを作成する必要があります。そのポートフォリオは、ビジネスのさまざまな領域に適用できるユースケースについて、広い視野を持つことによって生み出されます。

プロセスを評価する

メタバースへの移行は、新しいパラダイムを定義し、テクノロジーの変化と取り組みの実行に必要な経験に基づいて構築される学習曲線が重要になります。パイロットプロジェクトの開発・実行中に、プロセスを評価し、ユーザーから発信されたシグナルを評価することは非常に重要です。何がうまくいき、何がうまくいかないのか、何が簡単で何が難しいのか、そしてその理由は何なのかを発見することが、今後の貴重なデータポイントになります。

チーム作り

スムーズな進展を図るために、まずはパイロットプロジェクトから小規模にスタートしましょう。メタバースのビジネスビジョンを実行するために、専門家からなるパイロットプロジェクトチームを結成します。そのためには、特定のスキルを持ったメンバーを募集する必要があります。通常の開発やITチームとは異なり、メタバースチームは自己充足型で、柔軟性を持ち、反復的なアプローチを取るべきです。

また、主要なステークホルダーに情報を提供し続けることが重要であり、それによってメタバースチームへの支持を維持することができます。

取り組みのスポンサーシップを共有する

新興技術や破壊的な技術では、特にその技術が組織にとって新しく、潜在的に快くない変化をもたらす際には、複数の部署の支持を得ることが重要です。フロントオフィスとオペレーションにまたがるスポンサーシップを得て、そのバランスをとることで、より協力的な方法で、懸念事項や危険性を特定し、共有の認識を深めることができます。

メタバースの潜在能力に対して恐れや不確実性、疑念がまだ残っているものの、その技術は急速に進化し、利用しやすくなっています。また、インターネットの使い方に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。企業は、その波に飲み込まれるか、それとも波にのって新たなチャンスをつかむのか、決断する必要があります。他の大多数の新興技術と同様、早期から取り組むことは、不確実な未来に対処するための準備に役立ちます。

プロティビティは、10年先を見据えてメタバースを深堀しています。プロティビティのVISION(英語)

新しいグローバルITエグゼクティブサーベイの結果をお読みください:技術革新と技術的負債をめぐる攻防(日本語)をご覧ください。

この記事はforbes.comに掲載されたものです。テクノロジーコンサルティングソリューションの詳細については、弊社までお問い合わせください。

(2023年4月25日)

英語版ブログ「How Companies Can Prepare for the Metaverse and Build Revenue Streams」へのリンクはこちら

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